相続税対策
「相続したのに、お金が払えない」——
そんなことが、現実に起きています
相続でまず頭に浮かぶのは「遺産の分け方」かもしれません。ですが、それとはまったく別の落とし穴が存在します。
「相続税が、払えない」という問題です。
2024年末に亡くなった中山美穂さんのケースが、その典型として報じられています。遺産は不動産や楽曲の印税などを含めて総額20億円規模。順当にいけば一人息子が受け継ぐはずでしたが、そこに約11億円ともいわれる相続税がのしかかったとされます。
出典:週刊新潮(2026年)
パリで暮らす息子さんは最終的に相続を「放棄」したと報じられました。資産が20億円あっても、です。なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
カギは「現金で、10か月以内に」という鉄則
相続税には、見落とされがちな厳しいルールがあります。
原則、現金で、一括。期限は10か月以内。
亡くなったことを知った日の翌日から10か月——この間に、相続税を現金で納めなければなりません。(※制度の詳細は執筆時点のものです)
ここで問題になるのが、相続する財産の「中身」です。財産が預貯金ばかりなら、そこから払えばいい。ですが、財産の大半が不動産だったら——家や土地は、そのままでは税金の支払いに使えません。売って現金に換えるしかないのですが、10か月で都合よく、納得のいく価格で売れるとは限りません。
中山美穂さんのケースで指摘されているのも、まさにこれです。遺産の多くが不動産や印税といった、すぐに現金にできない財産だったのではないか、と。
「資産はあるのに、納税する現金がない」——これが、相続税のいちばん怖いところです。
「うちには関係ない」は、もう通じない時代です
20億円という数字を聞いて、「うちには関係ない」と思われた方も多いでしょう。ですが、相続税は2015年の改正で課税対象が大きく広がり、いまや都市部に持ち家があるだけで対象になりうる時代です。たとえば、こんなご家庭を考えてみます。
【ごく一般的なケース】
自宅マンション(市場価格):約1億2,000万円
預貯金:約5,000万円
合計:約1億7,000万円
一見、預貯金が5,000万円あるので現金は足りそうに見えます。ですが、家族の構成や自宅を相続する方の状況によっては、納税額しだいで手元の現金が思ったより心もとなくなることがあります。自宅は売るわけにいかず、かといって現金には限りがある——ここで初めて、多くの方が「うちもか」と気づくのです。
(※実際の評価額は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で計算され、市場価格より低くなるのが一般的です。小規模宅地の特例など負担を軽くする制度もあります。正確な税額は専門家の試算が必要です)
資産が大きいほど、問題は深刻になります
規模が大きくなるほど、この「払えない」問題は一気に深刻化します。
【遺産20億円のケース】
預貯金:2億円 / 不動産:15億円 / 印税などの権利:3億円
→ 相続税(最高税率55%):約11億円
→ すぐ用意できる現金:預貯金の2億円のみ
→ 9億円、足りません。
しかも、印税のような「これから入ってくるかもしれない収入」にも、今、現金で税金がかかります。結局、不動産や権利を売らなければ納税できない——というところに追い込まれます。
規模は違っても、構図はまったく同じです。「財産の中身が、現金で払える形になっていない」——これが、相続税で詰まる本当の原因です。
「分割払いにすればいい」にも、落とし穴があります
現金一括が難しい場合、延納という分割払いの制度があります。ですが、これにも代償があります。延納している間、利子税がかかり続けるのです。
不動産の割合が高いケースでは、利子税だけで年間数百万円規模の上乗せになることもあります。「分割にすれば安心」とは言い切れません。
相続税対策は、この順番で考える
では、具体的にどうすればいいのか。相続税の対策は、大きく3つの段階に分けて考えると整理できます。
- 現状把握——まず「うちはいくらかかるのか」を知ること。保有する不動産の評価額、家族の状況を洗い出すところから始まります。
- 節税対策——相続財産の評価額を抑える工夫。不動産の活用や生前贈与など、打てる手はいくつもあります。
- 納税対策——最後に、その税金を「どうやって現金で払うか」を決める。生命保険で備えるのか、不動産を整理して現金を用意するのか。
この順番が大切です。いきなり節税の小手先に飛びつくのではなく、まず現状を正しく把握することから始めてください。
「とりあえず税理士へ」では、遠回りになることがあります
相続税と聞くと、「まず税理士に相談しよう」と考える方が多いはずです。もちろん、最終的な申告には税理士が欠かせません。
ですが、知っておいていただきたいことがあります。税理士は「正しく申告する」プロであり、必ずしも「いちばん有利な対策を教えてくれる」わけではありません。相続に慣れた税理士ばかりではないのが実情ですし、不動産の評価の見方しだいで税額が大きく変わることもあります。
また、税理士に高額な手数料をしはらったとしても税務署に「否認」される可能性はぬぐえません。税理士は正しいと思っていても、それは100%ではないのです。税理士どころか会計士に委託しても同様です。極論ですが税務署が否認するといわれたら、追徴税がかかる可能性は完全にはなくならないのです。税理士・会計士はペナルティでも責任はとりません。
だからこそ、最初のステップとして——相続の実務と不動産に精通した相談先に、まず全体像を整理してもらうことをお勧めします。大まかな方向性と課題が見えたうえで、適切な税理士につなぐ。これが、遠回りに見えて、いちばん確実な進め方です。
なお、国内での対策に加えて、資産そのものの置き場所を海外に持つという選択肢もあります。フィリピン現地法人を活用した資産移転の考え方について、下記の記事でご紹介しています。「親が死んだだけで請求書」——相続税の不条理
不動産がからむ相続は、私たちにご相談ください
相続税の問題は、突き詰めると「不動産をどうするか」に行き着きます。
- 評価額が高く、税金が払えるか不安
- 財産の大半が不動産で、納税の現金が用意できそうにない
- 何から手をつければいいのか、そもそも分からない
ソクガイは、相続トラブルのご相談を多数お受けしてきました。その経験から、会計士・税理士・司法書士、さらに弊社の顧問弁護士などを駆使して不動産の相続を円滑にすすめるサポートを行います。
相続税対策は、早く始めるほど打てる手が多いものです。亡くなってからでは、できることはほとんど残っていません。ご本人もご家族も元気な「今」こそ、いちばんのタイミングです。